神経ブロック療法とは注射器と針を用いて痛みの部位もしくは、その痛みの原因となっている神経周辺に局所麻酔薬を投与して痛みを軽減させる治療法です。
神経ブロックの意義は「知覚神経ブロックによる除痛効果」「交感神経ブロックによる血行改善効果」そしてこれらの作用に基づく「痛みの悪循環を遮断する効果」にあります。使用する局所麻酔薬ですが、作用時間は1-2時間と短時間であり非常に安全な薬です（局所麻酔薬による神経ブロックは体にほとんど悪影響を及ぼしません）。
神経ブロックをおこなうことは、短時間痛みをおさえるのではだけでなく過敏となった神経の伝達を抑えて血行を改善し、体を本来の痛みのない状態に戻すための治療です。
また神経ブロック療法の診療対象は幅広く、腰痛、膝、足の痛み、頚部、肩、腕の痛み、顔面痛、頭痛や帯状疱疹の痛み、がんの痛みなどあらゆる痛みに対応しています。痛み以外にも特発性難聴や顔面神経麻痺、顔面痙攣などにも適応があります。これらの疾患に対し神経ブロック療法は大きな力を発揮します。

一般的な痛みの治療は病気の原因からくる痛みの刺激（圧迫、牽引、発痛物質、虚血などの痛みの原因）をまず除去することから始まります。しかし、病気の原因が治っているのに痛みだけが続く状態に陥ることがあり、専門的には非侵害受容性疼痛と呼ばれ専門的な治療が必要です。
当院では交感神経のブロックを重視しており、交感神経の刺激で発生した痛み（自律神経活動が痛みの原因となってしまっている状態）に対して積極的に取り組んでいます。
長引く痛みは不快感や不安感を引き起こし、交感神経の中枢である脳を刺激し自律神経活動を高めます。
交感神経の高まりは痛みを伝える神経を刺激してしまうので交感神経をそっとしておく（ブロック注射をする）ことが痛みの治療につながります。自律神経活動が痛みの原因となっている場合、自分で自分を痛く感じさせてしまう「何もしなくても痛い」状態になってしまう状態を改善することが重要なのです

ペインクリニックでは神経ブロック療法と併用して、それぞれの痛みに合わせた薬物療法を行っています。
処方する薬剤は一般的な消炎鎮痛薬の他に、神経自身が傷ついた痛みに効果のある薬や漢方薬などを組み合わせて使用します。長引く痛みは神経自身が傷つくことでも起こります。軽く触れたり、風にあたるなど痛みを起こすような刺激ではないのに傷ついた神経細胞が異常興奮し、より強く痛みを伝えたりします。また、私たちに本来備わっている痛みに対してブレーキをかける機能が壊れてしまい、感じる必要のない痛みをより強く感じてしまうこともあります。

このような痛みに対して新しい薬が使われるようになりました。一部の抗けいれん薬には神経の過剰な興奮を抑えて痛みを止める作用があり、抗うつ薬には痛みを抑える神経の働きを高める作用があり鎮痛効果が期待できます。漢方薬には体を温める生薬や血流を改善する生薬、鎮痛効果のある生薬もあります。痛みには冷えや血液の循環の悪さから引き起こるものがありますが、漢方薬はそういった症状に効果的です。当院では最新の西洋医学と古くからある東洋医学のそれぞれの特徴を生かした薬物療法を行っています。